忘備録的位置付けである読了本まとめ【2023年1月版】

 これまで、読んだ本についての感想文なり書評なりを書いたことがなかったが、気負ったものではなく、あくまで忘備録的な位置付けとしてのまとめを残すことにした。特にシリーズものの本については、とても役に立つだろうと思う。主要人物はもちろん、大まかな流れを記録しておくことで次に生かせるはずだからだ(それもあって、ネタバレともいえる内容だ)。
 カテゴリーを分けるか、そのままダイアリー扱いにするか、タグ付け程度で済ますかどうか、本の表紙を貼る、テキストのジャンプ率などの使いこなせていない部分などの改良、などなど。そこらへんを決めきれていないが、とりあえず先にまとめることにする。まずは1ヶ月分を月末にまとめることができればという感じで。
 あと、今回はまとめて書いているが、今後は読み終わった時点で書くことにしよう。その方が詳細を書きやすいし、何より熱量と記憶力がいいはずだ(最後の本の部分を見れば一目瞭然)。追記という形で色々書き足すこともできるが、次からはひとまずそれでやってみたいと思う。
 ということで、早速。



贖いのリミット(ハーパーBOOKS)
カリン・スローター著、田辺千幸訳
ハーパーコリンズ・ ジャパン(2019年12月16日発売)

評価:4.4 ★★★★☆

 最近、特に好きな作家の1人、カリン・スローター。ウィルトレントシリーズだ。2023年最初の読了本。舞台はいつものジョージア州アトランタ。実際に作家も住んでいるらしい。故郷だった気もする。
 安定の面白さと痛さだ。それが両立するというのをこの作家の本で初めて知った。まだまだ知らないことだらけだね、我々の世界は。うん。
 今回は、アンジーが主人公(というかアンジーにスポットを当てた回)で、アンジーが犯人か? 死んだのか? という思わせぶりな展開で進む。アンジーとウィルの子供が出てくるが、最終的に亡くなってしまう。ウィルと離婚が成立したと思われるところで終わるも、サラへのストーカー(パソコンに侵入してデータ搾取中)継続で幕を閉じる。次は誰にスポットがあてられるのか。期待大である。


ストーンサークルの殺人(ハヤカワ・ミステリ文庫)
M・W・クレイヴン著、 東野さやか訳

早川書房(2020年9月3日発売)
英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールド・ダガー受賞作品。
評価:3.2 ★★★

 ワシントン・ポーシリーズ。現在、3冊出ていてその1冊目。3冊目が(特に)面白いと聞いたので、まずはこれから読み始めた。
 イングランドのカンブリア地方を舞台にした物語。ストーンサークルで死体が連続で発見され、その流れにポー警部が巻き込まれていく。結局は同僚が犯人だったのだが、『こいつ、怪しいな。ここでそれを言う意味はなんだ?』という疑問が湧いたのがきっかけで(それもまあまあ序盤で)気づいてしまった。途中で気づくなんてことはとても珍しいことでもある。それだけに、うーん、だ。
 全体としては、前半はあまり面白味を感じなく。この作家の本が初めてだったからかもしれない(もしくは初めての訳者だったからかもしれない)。途中からまずまずの勢いという塩梅。
 ということで、次作に期待。


GONE ゴーン II 飢餓 上下(ハーパーBOOKS)
マイケル・グラント著、片桐恵理子訳
ハーパーコリンズ・ ジャパン(2016年11月25日発売)
評価:3.6 ★★★★☆


 これまたシリーズもの。15歳までの子供たちが主人公の世界で、2作目にあたる。突然、15歳以上の大人が消滅して、キングのアンダー・ザ・ドーム的な感じで直径40キロのみの世界になってしまうという世界だ。1作目を読み終わった時点では、『次もどんどん読みたい!』という感じではなかったが、2作目からは面白さが出てきた。1作目は舞台紹介という感じだったが、今作ではその狭い中で経済というものが確立されつつあり、それらの現実感が面白さを作っていったように思う。これもまた、次作に期待だ。


ネヴァー・ゲーム
ジェフリー・ディーヴァー著、池田真紀子訳
文藝春秋(2020年9月25日発売)
評価:3.2 ★★★☆☆


 久しぶりにこの作家の本を。これまたシリーズもので、1作目だ。最新作の3作目を読みたいがために読み始めた。
 というより、実はすでに読んだことがあった。あったというか、読んだ記憶がある。ただ、ブクログで読了の記録がないため、念の為に借りて読んでみたという塩梅。そして、分かったことは『多分だけど、出だしだけ読んでやめたんだろうな』ということだった。多分だけど。
 名探偵コルター・ショウが主人公。事件は解決するものの、父親が殺された理由と殺した人物(または組織?)を次作以降で追っていくという感じで終わった。あぁ、そうだったかなあ…などと考えつつ、なぜ読了にしていなかったのかと不思議に思う。
 面白かったかどうかということでは、まあまあ。まあこんなもんんじゃないのかなあ。3作目が面白そうだから、そこに期待。


ブラックサマーの殺人(ハヤカワ・ミステリ文庫)
M・W・クレイヴン著、東野さやか訳
早川書房(2021年10月19日発売)
評価:3.8 ★★★★☆


 ストーンサークルの殺人に続き2作目。過去に解決した事件が実は冤罪だった…という話で、窮地に立たされる。前回、部下になった(友達になったというのが正解か)ティリーに助けを求め、解決に向かう。絶対こいつが犯人やんけと自信を持っている中で、突然持ち上がった冤罪の証拠をひとつずつ覆していく。1作目はちょっとなあという感じだったが、サスペンスとしてはまずまず、人物描写が面白くなってきた。次が面白いとのことなのでそこは本当に期待だ。


地下鉄道(ハヤカワepi文庫)
コルソン・ホワイトヘッド 谷崎由依
早川書房(2020年10月15日発売)
※ピュリッツァー賞、全米図書賞、アーサー・C・クラーク賞など7つの文学賞を受賞
評価:4.7 ★★★★★


 久しぶりに満点に近い本。ここまでの高得点は『所有して何度か読みたい本』である。今回は借りて読んだが、近々、書い直したい。
 奴隷黒人が、地下鉄道を使って逃げる。ひたすら逃げる。南北戦争が起こる前、奴隷制度がまかり通っていた世界の物語。シンプルなようで複雑な世界。読み物として面白さを感じるのは、当事者目線で読めていないからだろうと思うと、逆に怖くなってくる。現実にあった世界をフィクションで楽しめてしまい、それを面白いと感じてしまう怖さを自分の中に認めつつ、最後まで一気に読んだ。いつもは清々しさを感じる読後も、今回ばかりは複雑な色が複雑な混ざり方をした読後感だった。
 何より最後まで地下鉄道なるものの存在を信じてしまうほどの表現力だ(実際には存在せず)。感服した。そして、Prince の Purple Rain を聴きながら書き進めたとあったので、尚のこと驚いた(というか妙に嬉しい)。次作(ニッケル・ボーイズ)もすでに図書館から借りてきている。そちらにも期待である。


翼っていうのは嘘だけど
フランチェスカ・セラ著、伊禮規与美訳
(早川書房・2022年9月14日発売)
※フランスの新聞《ル・モンド》紙主催の文学賞、ル・モンド文学賞受賞
評価:3.4 ★★★☆☆


 そんな文学賞があったんだと思いつつ、読み進めた。世界にはまだまだ知らない文学賞があるんだね。面白い。
 SNS を使いこなす Z 世代たちが主人公で、なんでもない少女がカースト制度の頂点に一気に上り詰める。そして、直後に失踪するという展開。語り手と時間軸が目まぐるしく変わり、その展開が面白さをほどよいものにしている、のだろうなあとは思うが、そういう展開もまあまあありきたりというか。ちょっと辟易してしまった。
 後半はところ変わって主人公の深層心理に焦点をあて、人間とは的な展開に。うーん。なんだかなあという読後感。うん。まあ読んでみてよかったなあとは思うけども。
 これだけで判断するのもどうかと思えるので他の受賞作も読んでみたい。


眠れる美女たち 上
スティーヴン・キング、オーウェン・キング共作、白石朗訳
文藝春秋(2020年10月29日発売)
評価:3.7 ★★★★☆


 眠りについたら繭のようなものに包まれ、目がさめることはない。しかも女性にのみ起きる現象。そして、眠りについた女性は、夢の世界ともいえる別世界での生活を始める。そんな中、眠りについても繭に包まれることのない不思議な女性が現れる。相変わらずの世界観(安心ともいえるかもしれない)だ。上・下本で、今は下の途中。ほとんどの女性が眠りについてしまい、その女性の夢の世界も少しずつ描かれ始めたところである。
 20年以上もの間、慣れ親しんだ作家、スティーヴン・キング。その息子との共作本である(訳の白石氏も同様に長い付き合いになっている)。いよいよ、ついに、この本に手を出してしまったという感じだ。
 何しろ、長い。同氏でいうところの IT やスタンドほどではないかもしれないが、長編作品であることに変わりはない。その長さに比例して登場人物もまた、多い。登場人物一覧に載っている人数も多いし、未掲載の人物も同様だ。それなのに、不思議と多く感じない。頭の中で容易に作品の世界が出来上がるからだろうか。私だけではなく、ほとんどの方がそうじゃないのかなと思う。人物たちが見えるのだ。うん、安定の面白さ。これだ。これこれ。
 共作本自体が初めてだし、彼の息子の本に触れるのもほとんど初めて(どちらがメインで書いたのかなど、あとがきで書いてあるだろうと期待している)。一見して、アンダー・ザ・ドームのような設定にも思えるが、そこはよし。まあよし、ということにする。どんどん読み進めていこうと思う。


 以上。今月は全部で9冊。よく読んだ。よく読んだけれども、フィクションものだらけなのがいただけない。せめて、4冊フィクション・1冊ノンフィクションぐらいの割合でいけたらと。そういえば、ノンフィクションものを少しでも読むというのが今年の目標でもあったんだ。今更だけど、それを意識して進めていこう。

 でもやっぱり、フィクションだよなあ。うん。事実は小説よりも奇なりという言葉の真逆が、いい。不思議だなあ。